未完成の仕事の罪悪

顧客サービスは可能なかぎり充実させたいものです。

しかし、業務の種類によっては許認可や資格が必要なものもあります。

また、複数の作業を組み合わせて仕事が完成するケースも数多く存在します。

自身の得手不得手もあるでしょうが、だからと言って「未完成な仕事」のまま終わらせていいはずがありません。

最近、続けて似たような事例がありました。

そのひとつが…

 <依頼人>

高齢の女性

 <依頼人の希望>

同居していた姉が亡くなり、姉の銀行預金を引き出したい。

<経 緯>

銀行へ行き、預金(1千数百万円)を引き出したい旨を伝えると「亡くなった人と相続人全員の関係を確認できる戸籍謄本を揃えてきて下さい。それから遺産分割協議書や全員の印鑑証明書も必要です。」と言われました。

このことは何処の銀行でも同じ対応です。

亡くなった姉には子供がいないので、相続人は、依頼人を含めた兄弟姉妹及び甥姪です。

依頼人は関西出身で、東京には身寄りがなく、他の相続人は関西と四国に住んでいます。

存命の弟妹はともかく、甥姪には20年以上会っていませんし、電話を掛けたこともありませんでした。

自分以外の人たちの戸籍謄本を集めることは困難だったため、地域のコミュニティから紹介された【法律家】へ依頼しました。

しばらくすると戸籍謄本が揃いましたが、その【法律家】は、「これで私の仕事は一旦終わりです。次は相続人全員で協議して分け方を決めて下さい。再び依頼されれば遺産分割協議書を作成します。」と言うのでした。

この後、依頼者はどうして良いか分からず途方に暮れてしまい、再び銀行に相談に行きます。

そして銀行の支店長から私に「相続手続きで困っている人がいるから相談に乗ってあげてほしい」という連絡が来ることになります。

<問題点>

確かに兄弟姉妹の相続は、必要な戸籍謄本が多く、難易度が高い作業です。

しかし依頼人の希望は「預金を引き出すこと」であって、「戸籍謄本を揃えること」は作業の一部でしかありません。

遠方かつ疎遠な複数の親族に「遺産分割協議書に署名し、印鑑証明書をもらうこと」をどうやって頼めばいいか分からないから困っていたのです。

依頼人からしっかりと話を聞けば、この【法律家】にも、この部分が最も困難な作業であることが分かったはずです。

それなのに「戸籍謄本を揃えること」だけを「摘み食い」したのは、

(1)その「最も困難な作業」の部分は、【法律家】である自分の仕事ではないと考えた

(2)その部分をやる自信が無かったので逃げた

このどちらかでしょう。

 

まず最初に依頼人に対して「預金を引き出す」までの作業工程を説明するべきです。

その後、(1)であれば、自分がやらない(出来ない)作業について、「依頼人自身が出来るように教える」か「やってくれる(出来る)人を紹介する」など、仕事を完成させるパーツをすべて提供する必要があるでしょう。

もし(2)であれば、依頼人に迷惑を掛けるだけですから、初めから仕事を引き受けてはいけない、絶対に!

<結 末>

他の相続人には、法律上の権利、依頼人が置かれている状況、将来の予測などを丁寧に説明する内容の書面を送り、結果として、依頼人の希望通りの遺産分割案(ほぼ全額を依頼人が相続する)に合意して頂きました。

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