経営者にとって“事業承継”は常に大きな悩みのタネです。
ひとつは後継者の問題。もうひとつは店舗・工場・事務所などに使っている個人名義の事業用資産や自社株式の承継の問題。
後者については近年、遺言に対する関心が高まっています。
ですが相続や事業承継を考えるときに“認知症”(あるいは脳梗塞などの障害)が発症する可能性を想定しないわけにはいきません。
遺言の効力は“死後”に生じる
認知症の程度によっては、事業経営に支障をきたすこともあります。
社長本人が経営の第一線から退いた後、後継者が株式や事業用資産に関わる“大きな意思決定”を出来ない状態に陥るかもしれません。
事業用資産などを後継者に承継させる遺言を作成していても、その効力が生じるのは社長本人が亡くなった後です。
後見制度が“足かせ”になる可能性
何の準備もなく認知症を発症すれば、法定の成年後見制度を活用することになるでしょう。
後見は“本人の財産を守る”ための制度です。本人に不利益になる可能性がある新たな借入れのための担保提供などは出来ません。
裁判所から選任された専門職後見人が行う後見事務が、親族や会社にとって好ましくないこともあります。
遺言+任意後見、 遺言+信託という“合わせ技”
事業承継においては社長本人の意思を尊重することが大切です。
そのためには心身が健康なうちに自分の意思を明確にし、将来それが実現出来るような準備が必要です。
事後に自分の意思を実現する方法として「遺言」「任意後見」「信託」などがありますが、個別の事情によっては充分に機能しないことも考えられます。
可能性を広げれば限りがありませんが、ある程度の想定の範囲で起こりうる事態に対して、複数の方法を組み合わせ、洩れがないよう準備をすることには大きな価値があります。